投稿

4月, 2025の投稿を表示しています

風力発電先進国のヨーロッパでは

イメージ
  「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power             イギリス・ドイツ~自然共生の取り組み イギリスSPR社 (スコティッシュ・パワー・リニューアブル 社) ホワイトリーウ インドファームの事例  SPR社では運営するすべての陸上風力発電施設で、生態系の保全活動に自主的に取り組んでおり、野生動植物の生息地の改善や回復、森林の創出、希少種の生息状況をモニタリングすることで、種、生息地、生物多様性に対し、地域単位でみて全体的に純利益を生むように努めている。SPR社の担当者は「自然の力を借りて利益を得ているので、その利益は自然環境に還元されるべき」と語り、風力発電事業で失われた自然環境は97ヘクタールだが、建設地とその周辺500ヘクタールを植林や泥炭湿地の回復などの生態系保全活動を行ってきた。その保全活動が功を奏し、今ではアカライチョウ、クロライチョウ、タシギ、ダイシャクシギ、ハイイロチュウヒ、チョウゲンボウなどの希少な野鳥が繁殖するようになった。(まず日本ではこんな感心な事業者がいるというのは聞いたことがありません。逆に「余計なことをするな!面倒な事例を残すな!」と他事業者に叱られそうです) ドイツKNE(自然保護とエネルギー転換の専門センター)の役割  KNEは2016年から3年間で、150件の地域紛争(うち8割は陸上風力発電事業)に調整役として関わった。事業者は早い段階から地域住民に計画内容を説明することが重要で、地域住民の意見をよく聴いて、貴重な自然環境に影響が出ないように計画を見直す姿勢が求められる。地域住民から理解を得るための行動をとらないと、紛争解決に多大な労力や時間がかかることになる。(日本ではこのような姿勢を持っている事業者はほとんどいないようなので、地域で紛糾することになる) ※ 視察に行った日本野鳥の会自然保護室の研究員は、「イギリスでもドイツでも多くの事業者が自然保護に対する意識が高く、自然環境に対し、マイナスの影響を与えないように事業を実施したいと考えているということでした。これが自然共生型の再エネ施設が増えている要因です。一方、日本では、まず事業者の意識を変えていくことから始めなければならないと痛...

実施しようとしないバードストライク対策

「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power              “たかが鳥のために手間も費用もかけない ”    福岡県北九州市若松区の響灘埋立地にぽつんぽつんと立っている風力発電施設では、現在も野鳥が風車の羽根に弾き飛ばされているようで、食物連鎖の上位にあるミサゴ(タカ科)の死骸も発見され続けています。私が関わり始めた10年以上前から現在まで(2025年4月)、11種49羽の死骸が発見されています。事業者は衝突死とは認めていない例がほとんどですが、私はすべてが衝突死だろうと思っています。月1回もしくは週1回程度では、実態の半分も発見できないことを考えると、発見数の10倍は衝突していると推測できます。  ところが、事業者は対策を全く実施していません。というより、その気が全くないようです。“持続可能な野生生物との共存”、“生物多様性”を軽視しています。野鳥の衝突を防ぐ手段として費用をかければかなり有効なものはありますが、色んな方法を複合的に試行してみる気もないのでしょうか。残念としか言いようがありません。 ~野鳥の衝突を防ぐには~                              その1.野鳥に大きな影響があると考えられる場所には計画しない!  残念ながら現在も、野鳥への影響など意に介していない計画が続々と出ています。保護団体や地元からの反発が無ければ事業者にとっては幸いで、反発が大きければ(特に自治体からの)さっさと計画を撤回するという事例が少なくありません。 その2.計画段階で、周辺の野鳥の生息状況から、立地についてよく検討する!  事業者はまず発電に適した風が吹くかどうか、送電に問題がないかどうか、工事に必要な林道などがあるかどうかなどが第一で、野鳥をはじめとする自然環境や、地元の人たちへの影響などは二の次のようです。洋上風力発電の場合は、漁業に支障がないか、航路の邪魔にならないかなどが第一で、海鳥や海棲哺乳類(イルカなど)、景観への影響などについては環境アセスで調査をし、評価するからということで、後回しです。その評価も「影響は小さい」の決まり文句で、そう言わないと計画を進められないからです。環境アセス審査会...

風力発電計画の中止相次ぐ~南会津と三重県津市

イメージ
  「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power              貴重な高層湿原とブナの森が広がる福島県会津大沼のケース 『 風力発電計画撤回、南会津町長も要求~事業者の日立造船に』  南会津町長は、「自然保護や防災、住民生活、観光分野に関わり、地域経済への悪影響も懸念される。計画は認められない」と述べ、事業者の日立造船に白紙撤回を求めていた。町は2019年にも計画を断念をするよう伝えていたという。計画検討エリアには、国指定天然記念物の駒止(こまど)湿原、博士山(はかせやま)鳥獣保護区、舟鼻山(ふなはなやま)周辺には貴重なブナ林が広がっている。 (引用:2022年7月6日福島県地方紙「福島民友」の報道より) 写真上:国指定天然記念物「駒止湿原」標高1100mの高層湿原 (引用:南会津町観光物産協会H.Pより)   自然保護団体からは、「会津山地緑の回廊の分断を引き起こし、イヌワシとクマタカ、渡り鳥のノスリやハチクマなどがバードストライクの恐れがある。さらに、風車建設のために保安林を解除し、森林伐採、土地の改変を行うことは、自然環境保全と防災上で大きな問題がある。」と意見書を提出していた。また、猛禽類保護団体からは、「風車の位置や基数の変更等の小さな対策によって、イヌワシの衝突死を回避すればよいという考え方は適切ではなく、再生可能エネルギー促進のために犠牲にしてよい場所ではない。配慮書の段階で中止すること。」という厳しい意見が提出されていました。  本風力発電事業は、完成すれば発電出力最大18万3千キロワット(約40基)と日本最大級であったが、2022年8月4日、日立造船は「会津大沼風力発電事業」について、経産省へ事業の廃止を発表した。 三重県津市青山高原のケース~ 異例の建設途中の事業中止!  環境アセス手続きが必要でない規模のため、事前の説明がなかったことに近隣住民が計画に反発。事業者は工事中断を余儀なくされた。  2018年、事業者の住友林業は、津市白山町に所有する私有林と借地の計6ヘクタールを開発して、高さ121mの風車4基を2020年7月に着工した(2022年3月の営業運転開始目標)。2021年10月、住民団体...

環境への影響を理由に風力発電計画の中止相次ぐ!

イメージ
  「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power                北海道・東北・中部地方で、風力発電計画が2022年に相次いで中止になっています。自然保護団体からの中止要請に加え、地元の問題意識の高まりが事業者に影響を与えているようです。 【北海道伊達市と千歳市、宮城県川崎町・山形市のケース】 2022年7月29日付、関西電力が発表した「事業の廃止通知書」です。             「当社は北海道伊達市・千歳市および宮城県川崎町の2地点において検討を進めてきた陸上風力発電事業について、事業を実施しないこととし、第1種事業の廃止等通知書を提出することとしました。~中略~本事業計画については、地域の皆さまのご意見を踏まえ、計画の見直しを検討した結果、環境への配慮と事業性の両立が難しいと判断したことから、事業を実施しないこととしました。」 <計画事業規模>北海道伊達市・千歳市:最大19基  宮城県川崎町・山形市:最大23基  この計画が自然環境に無配慮だったのは、まずは支笏洞爺国立公園や蔵王国定公園に計画地がかかっていたことです。良好な自然環境・景観を何とも思わない計画に対して、北海道伊達・大滝区の地元住民はこの1年前に計画反対のための団体を設立し、反対署名を集める活動を始めていました。自然保護団体からも、イヌワシ、クマタカ(共に種の保存法指定種)への影響、さらに渡り鳥の飛翔経路にある事。また、工事用道路建設に伴う森林伐採の危険性と国立公園内の景観損傷を訴えていました。北海道環境影響評価審議会においても、計画が国立公園内に含まれていることや、保安林への配慮を欠く点が指摘されていました。  宮城県川崎町では、蔵王の「御釜」からの眺望など景観への悪影響は避けられず、予定地が国定公園にかかっていたことも含め、県の審査会からも厳しい批判が上がりました。関西電力は国定公園内への建設をあきらめ、風車を23基から19基に削減しましたが、それでも批判を受けたため、さらに削減することにしたが、県の審査会からは、「御釜」から風車が一切見えない配置も求められ、計画は事実上行き詰まりました。地元住民からの反対意見書も、川崎町に寄せられただけ...

鹿児島県紫尾山系風力発電計画はこう着状態

イメージ
  「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power             絶滅危惧種の猛禽類クマタカをシンボルとする生態系への影響や 生息地の山林伐採、掘削の自然破壊を懸念 ~2事業者が競合し、5年経っても先行見えず、戸惑う住民~   2事業者(U社とD社)が互いに住民説明や環境アセスを進める競合状態が続いている。発電事業の前提となる国の固定価格買い取り制度(FIT)では、U社が認定を受けているが、未だ計画地の貸付契約を結べていない。同一計画地での事業は1事業者に限られるため、U社の手続きが期限切れとなれば、D社が計画地の事業者となる可能性がある。 ※2019年3月にU社は事業計画の認定を受けたが、その後、「3年ルール」の猶予期間を経て、提出期限(2022年3月)を過ぎたが、九州経済産業局はこのU社に対して、未だに猶予を与えているのか?  一方、そんな2事業者が競り合う状況に住民は、「同時に大量の風車が立つのか」「結局どちらが建てるのか」と戸惑いの声が上がっている。(住民無視の計画も甚だしい)  こんな住民の声を気にしてか、U社は事業計画を一部変更した。風車25基を19基に減らし、クマタカの生息や景観に配慮、工事に伴う大量の残土を地域外に搬出するとしたが、一部地域からは景観や土砂災害などに懸念があるとして反対の声があり、同意を得られていない。(一部引用:2023年1月10日南日本新聞373news comより) <ブログ作成者から一言>  地球温暖化防止のための自然エネルギー推進を大義名分にした、単なる利権目的の典型的な例と言えるでしょう。そして、それに翻弄される住民のみなさんの気持ちをないがしろにした事例というほかありません。生態系の上位にある希少な野鳥のクマタカの生息に配慮する気持ちがあるのであれば、設置基数を減らすのではなく、計画を撤回することが最大の配慮です。2事業者の環境アセスは、「希少種クマタカをはじめとする鳥類への影響は、出来得る限りの対策により、限定的で小さいと考える」という、お決まりの評価でしょう。形骸化された環境アセスは信じるに足りません。自然環境と住民の生活環境を守るには、自然破壊やそれに伴う災害の懸念がある事業は白...

秋田県の国内初洋上大型商用風力発電

イメージ
  「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power             地元保護団体が反対する中、野鳥への影響をないがしろにして  陸上、海上、所かまわず風力発電施設が押し寄せている秋田県で、2022年12月22日、国内初となる大規模商業用洋上風力発電が能代港で運転が開始された。防波堤の外側に並んだ風車は海底に基礎を固定する「着床式」で、1基当たりの出力は4200kw。この事業者は秋田市の秋田港にも13基の風車を設置している。2023年1月秋田県沖では国内最多の4海域が国による洋上風力発電の整備促進区域に指定されており、2030年にかけて約100基の洋上風車が稼働する予定。(秋田県「河北新報オンライン」より一部引用) 2023年1月5日能代市落合地区にて撮影(提供:秋田県支部事務局 加藤様)  日本野鳥の会秋田県支部は、「(公財)日本野鳥の会」、「日本雁を保護する会」と連携して、数々の意見書提出と記者会見を行ってきたにもかかわらず、事業者は一応聴くだけの“柳に風”だったのでしょうか。パブリックコメント(市民からの意見)制度の形骸化とともに、事業者による環境アセス(環境影響評価)も自治体が誘致しているだけに、お決まりの「建設ありき」で、“鳥類への影響は小さく限定的”という形だけの影響評価だったことでしょう。アセス審査会委員も自治体の後押しによる事業だけに、事業者に対して厳しい意見は言いにくかったことが容易に想像できます。ただ中には海鳥への影響を懸念する、もしくは計画を見直すべきという意見を出した委員がおられたかもしれませんが。 <秋田県支部による意見書の要点> 意見書より抜粋引用  当該海域はガン・ハクチョウ類をはじめとする、国内における主要な渡り・移動経路であり、ミサゴ、ハヤブサの重要な採餌海域である。さらにマガンが長距離移動の際、その飛翔高さが100mに至るまでに、3kmの距離が必要であるが、計画の風車を飛び越えるには距離が足りない。  また、その他影響を受ける鳥類として、国内でも有数の多くのカモ類、カモメ類、そして渡り鳥条約掲載種のオオミズナギドリ、希少種のアホウドリ、多くのシギ・チドリ類、ハヤブサの襲撃を避けながら海上を渡るヒヨド...

海岸の自然と景観を破壊する巨大風車群!

イメージ
「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power               風力発電促進区域に押し寄せる風力発電施設 秋田県の自然景観は・・・ 写真上:秋田県の海岸沿いは巨大風車だらけ   秋田県能代市の海岸には日本最大級の海岸林が広がる。「風の松原」だ。面積は760ヘクタール。地域の先人たちが苦労して築いてきた松林である。日本の海岸防砂林のお手本とされてきた。「日本の自然100選」にも選ばれ、「先人の思いが込められた能代の宝」とされている (朝日新聞社編『日本の自然100選』朝日文庫) 。その松原も次々と伐採されている。すさまじい自然破壊である。 (JAWAN通信139号・中山敏則氏) ※JAWAN(日本湿地ネットワーク):日本各地の湿地保護団体のネットワーク組織。ラムサール条約の推進や湿地干潟の保護や回復のための活動を行っている。  今、秋田県内における風力発電計画として、陸上に約80基(1基5000kwとして)、洋上には600基近く(1基1万kwとして)の計画があります(秋田県環境アセス情報)。秋田県は人口90万人を割り込み、その危機的状況を打開しようと、風力発電事業を積極的に誘致して、地域再生のために県内資本を利用し、利益を県内に還元しようとの狙いのようです。さらに国の洋上風力発電促進区域指定を追い風に、“お金落ちて山河(海も)無し”の秋田県となってしまうのでしょうか。北九州市においての風力発電事業は、今のところ響灘と後背地の埋立地となっていますが、今後、北九州国定公園の山地や北九州市東部の海岸に計画が広がる懸念もあります。自治体の公募誘致と国の促進区域指定を注視していかなければなりません。 写真上:秋田県三種町の釜谷海水浴場に並ぶ風車群。 地面から羽根の頂点までの高さが125m、30階建てのビルに相当するものもある。浜辺の景観は台無しだ。 国の洋上風力発電促進区域指定はゾーニングと言うけれど・・・  ゾーニングというと、風況の良さはもちろん、野鳥の生息や漁業への影響、そして住民の健康に影響がないエリアを風力発電適地として指定するものと認識していますが、秋田県(能代市、男鹿市、秋田市、由利本荘市など)の海域や佐賀県の唐津湾に計画が集...

海の生態系にも影響のおそれ

「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power   漁師さんも懸念し始めた洋上風力発電   風力発電を海洋に設置する場合、水深が比較的浅い海域では海底部に基礎をつくる着床式となるようですが、その基礎部に藻や貝類が付着し、小魚が集まり、その小魚を狙って大きな魚が集まるということになるということです。そこで、新たな漁場ができるので、洋上風力発電も悪いことではないとの見方もあるようです。しかし、本当にそれがいいことなのかと、やや疑問に思っていましたが、やはり同じように疑問を持った人たちもいました。「新たな漁場というより、それまでと違った生態(それまでいた魚がいなくなって、新たに別の魚が棲むようになるのか?)になるのではないか。」という疑問です。そんな折、次のような報道を目にしました。 「国が導入を進める洋上風力発電の「有望な区域」(促進区域)として指定された「千葉県いすみ市沖」について、千葉県の会合で、専門家からは「海の生態系に影響を与えるおそれがある」として、詳しい調査をするべきだとする意見が出された。」  千葉県のいすみ市沖には60万kwを超える洋上風力発電計画があり(1基6000kwなら100基以上)、潮流などに影響があるのではないか、と思われる基数です。潮流に影響があるとすれば、回遊する魚類にも影響が及ぶのではないかと思いましたが、やはりそれを心配する動きがありました。 潮の流れが変わり、あご(とびうお)がいなくなるかも ~佐賀県唐津市沖の洋上風力発電導入計画に周辺海域の漁業者が反対~    佐賀県と唐津市は風力発電の誘致を目指しており、地元にも恩恵が及ぶと目論んでいる。しかし、周辺海域は特産品のトビウオ(あご)の回遊ルートに当たるといい、平戸漁協は「あごがいなくなるかもしれない。」と、平戸市とともに計画に反対している。さらに計画海域に近い唐津市の5漁協も漁に影響するとして反対している。また、「海の景観が壊される!」と、計画見直しを求める団体(「唐津・玄海の海の未来を考える会」)もある。(2022年4月15日付、西日本新聞より)  これまで海洋上の開発については、一定の漁業補償をすれば、漁業者との折り合いがうまくいっていたようですが、ここにきて、地元自治体が...

洋上風力発電はヒヨドリの渡りにも影響か?

イメージ
  「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power  北九州 では、4月と10月はヒヨドリの渡りのシーズンです。 希少な野鳥が風力発電の犠牲になっていることが注目されがちですが、いわゆる普通種と呼ばれるヒヨドリたちにも洋上風力発電の影響が及ぶでしょうか。 海面すれすれを飛翔するヒヨドリの群れ Ⓒy.morimoto  2024年4月13日、北九州市門司区部埼灯台で行われた「ヒヨドリの渡り観察会」では、5,000羽を超えるヒヨドリが観察されました。午前8時頃からの観察で、20分間で4,800羽が海峡を渡り、その後、灯台付近に集まったヒヨドリは100羽、200羽の群れになって対岸の山口県の下関に向かって海上に飛び出して行きました。そしてすぐに海面近くまで降下し、海面すれすれを飛翔します。なぜそんな危険な飛び方をするのでしょう。実は、天敵のハヤブサの襲撃から身を守る飛び方をしていると言われています。海面すれすれを飛べば、ハヤブサも油断すると海に突っ込んでしまいます。群れで一丸となって飛ぶことで、ハヤブサに的を絞らせないようにして、対岸の下関を目指すのです。それでも、群れから遅れてしまうヒヨドリがいて、ハヤブサに捕まってしまうヒヨドリもいますが、100羽のうちの99羽は無事に対岸にたどり着くということになります(ハヤブサも子育て時期でヒナに与える食料探しに奔走している時期です)。北海道ではヒヨドリは夏にしか見ることのできない夏鳥のようですが、あの広い津軽海峡を渡っているんですね。「ガンバレ!ヒヨドリ」と応援したくなります。  そんなヒヨドリなど海上を渡る野鳥たちに、洋上風力発電はどんな影響を及ぼしているでしょうか。ヒヨドリのように海面近くを飛翔する野鳥もいれば、海上を比較的高い高度で飛ぶ野鳥もいます。しかも、ツバメなどの小型の野鳥は夜間に飛ぶことが多く(天敵に襲われないために)、夜間のために見えにくくなった中を、風力発電の照明にひきつけられて、次々に風車の羽根に弾き飛ばされることでしょう。  北欧スウェーデンの洋上風車の事例では、ヘリコプターを使って1年間に44回の死体捜索調査をしたところ、442羽の死体(これでも一部でしょう)を回収しました。風車1基当たり年間平均約...

野鳥はなぜ風車に衝突するのか

イメージ
  「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power 野鳥はなぜ風車の羽根に衝突するのか? (自由自在に空を飛べる野鳥は避けることができそうだが・・・) その1. 野鳥が衝突しやすい場所は、風車の多くが設置されている岬・半島・海岸の上、山の尾根などです。そこは野鳥にとって飛びやすい場所でもあります。また、営巣地やねぐらとエサ場の間に風車があると衝突事故が起きやすくなります。 その2. 回転している羽根の向こうの景色が透けて見える現象(モーションスミア現象)は、鳥類の眼は人間に比べて起こりやすいと言われています。野鳥は回転直径100m以上という巨大な羽根の向こうの景色に向かって飛んで行き、衝突するようです。風車は見た目にはややゆっくりと回っているように見えますが、強風時の羽根の先端は、新幹線並みのスピードで回っています。 写真上:風車に衝突が多い海ワシ類 (公財)日本野鳥の会提供 その3. 特に中型、大型のタカ類は地上のエサを上空から探すとき、エサの小鳥や魚、小動物が現れると、風車の羽根が回っていることを忘れ?急降下したときに羽根に衝突し、弾き飛ばされるようです。 その4. 野鳥は夜間にも飛行しますが、風力発電の照明にひきつけられたり、悪天候の際、低く飛ばざるを得なくなり、風車の回転域に入り、衝突するようです。 【ブログ作成者から】  鳥類は長い歴史の中で、何が危険で何が安全なのかを学んできたのでしょうが、 近年突然現れた巨大な風車に驚いたというよりは、「なんだこれ?」という、未だに危険なものとも何とも認識できていないのではないでしょうか。  風車を数年間見なれているはずのトビやカラス(留鳥)が相変わらず今も風車の羽根に衝突しています。年に1回しか日本に渡って来ない渡り鳥も、渡りコースに去年まで見なかった巨大な風車がブンブン回っていても、危険なものとは認識できず、群れで衝突していることでしょう。  事業者は「そのうち風車に馴れて、避けるようになる」と、有効な対策実施を怠ったり、対策を実施しても、 風車のタワーや羽根に、野鳥が認識しやすいような塗装をしたり、鳥が嫌がる音を出したりの、効果のない対策を今でも採用しているようですが、本気で野鳥への影響軽減になるような対策...

野鳥が風車に衝突死した事例

イメージ
  「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power                 風力発電による   国内及び海外における 野鳥の衝突死事 例 <日本国内における事例数> 2019年(公財)日本野鳥の会資料より 105種569羽 (2023年3月末時点では604羽)  公的機関によって「可能性が高い・ある」と判断された事例数。この中でタカ類が約30%、カモメなどの海鳥が約24%を占める。風車の羽根の回転域と飛ぶ高さがほぼ同じであることから、バードストライクが多くなるようだ。  なお、この事例数は ほとんどが偶然発見 されたものであること、また、衝突死と認められないケースもあることから、 実際の数はこの数字の数倍から10倍以上であろう。 ★ 風力発電によるバードストライクと認められることの難しさ  風力発電事業者は、衝突した瞬間でも見ない限りは簡単に認めない傾向があり、死骸を解剖したりなどの検査を積極的には実施しない。 <北九州市内の事例数は?>  すでに撤去された響灘の実証実験機の洋上風力発電に衝突したミサゴ1羽が衝突死として公表されただけ。しかし、響灘地区の風力発電施設ではこれまで11種33羽の死骸が発見されており(2023年1月現在)、すべて風車に衝突した野鳥と推測できる。施設点検ついでの偶発的な発見だとすれば、実際はこの何倍もの数字になるに違いない。中には、絶滅危惧種や渡り鳥条約掲載種もいるが、衝突防止の工夫は何もなく、響灘地区で繁殖しているチュウヒ( ※ )たちの危険は続くのだろうか。 ※ チュウヒ(写真上):絶滅危惧種・国内希少野生動植物種(種の保存法)に指定されているが、本州以南ではごく少数のつがいが生息しているのみである。ⒸT.ITOYAMA             今日もどこかで野鳥が風車の羽根に弾き飛ばされている! <海外における事例数> (公財)日本野鳥の会資料より 1)ドイツを中心に欧州での調査による事例数:829羽   内訳:カモメ科348羽、タカ科234羽、ハヤブサ科36羽、     カモ科42羽、カラス科20羽など 2)SEO/BIRDLIFE(スペイン)作成による衝突死事例   ...