響灘洋上風力発電の影響を受ける野鳥たち①

「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power

 

 北九州市若松沖で建設工事中の響灘洋上風力発電25基の事業は、響灘海域の生物多様性を軽視するかのように、海域に生息する野鳥たちへの実効性ある影響軽減策を実行する気配もなく、工事が進んでいます。この事業を誘致した “環境未来都市 ” “ SDGs未来都市 ”の北九州市は市民に配布される「市政だより」でその進捗ぶりをアピールしています。※野鳥たちに危険が迫っていることもアピールしなければです。


身に危険が迫っていることも知らずに...

Birds don't know they are in danger.

 2025年末には海水面から200mを超える高さの巨大な風車がニョキニョキと海上に建ち、直径170m以上のローター(回る3枚羽根)が「ウオーンウオーン」と、うなり音を発しながら運転を開始します。ふわふわと飛び回るカモメたち、上空でくるりと輪を描くトビや、ホバリングしながら魚を探すミサゴたちにとって、身に危険が迫っていようとは、全く理解も想像もできない響灘海域の野鳥たちです。今日も響灘海域の野鳥たちは、騒々しくなった海上にとまどいながらも、エサ探しにいそがしく飛び回っていることでしょう。

 私たちは、野鳥たちが風車の羽根に弾き飛ばされないように、叩き落とされないように、「危ないよ!」と知らせることもできず、事業者の対策にも期待できず、誘致した北九州市はそれを見て見ぬふり、脱炭素の旗を振って、海上に林立する洋上風車を誇らしく宣伝することでしょう。野鳥たちの命の危険を顧みることをせずに稼働する風力発電は恥ずべきことです。

 20233月時点における、国内で風車に衝突死した野鳥の数は604羽と公表されていますが、行政関係からの報告が主であることと、この多くが偶発的に発見されたことをことを考慮すれば、実際にはこの10倍くらいと推測できます。特に事業者は月に一度の設備点検ついでの死骸探索など、積極的には死骸発見に努めていないと思われるからです。(事業者にとって都合の悪い野鳥(希少種など)の死骸が発見されれば、隠蔽の可能性も?アセスデータ改ざん疑惑のある昨今、可能性は無きにしもあらずです)さらに衝突して落鳥すれば、陸上では捕食動物などに持ち去られ、海上では波に流され、沈んでいくことから、被害実態の把握には程遠いでしょう。海上においての探索方法としては、ヨーロッパで実施されたヘリコプターや、近年多用されているドローンを使った探索が効果的ではないかと思われます。

危険が迫る野鳥たち

 トビ(タカ科)英名:Black-eared Kite 写真:TITOYAMA

            

 一般にはトンビとも呼ばれるトビの多くは海辺や漁港の周辺で見られ、おこぼれの魚などを狙っているようですが、北九州市の市街地を流れる紫川(むらさきがわ)上空でも輪を描いて飛んでいます。ハトにえさを与えている人がやって来る時間になると、どこからか集まって来て、ちゃっかりとパンなどを頂いているようです。鳥類の中でも優れた飛翔力を持っているトビですが、若松区の響灘埋立地で稼働する風車下で発見された野鳥死骸のトップはこのトビです。回っている風車近くで悠々と飛んでいることも多く目にしますが、風車下の鳥の死骸でも探しているのでしょうか、今にもはねられそうになることもしばしばです。1年中同じ所に棲んでいるようなので、風車を危険なものとわかりそうなものですが、10年以上運転の風車下でも死骸が発見されています。

 ミサゴ(タカ科)準絶滅危惧種 英名:Osprey 写真:TITOYAMA

                    

 オスプレイの英名がついたこのタカは、魚を主食とするタカです。魚が多い海辺で見ることが多いのですが、元々は河川の中流域以上に生息していたところから、内陸の湖沼などでも見ることができます。上空でホバリングしながら、水中の魚に狙いを定め、ダイビングして魚をつかみ、飛び立つ様は、猛禽類の勇ましさを感じます。響灘洋上風車群の北側に位置する白島で多数営巣し、子育てをしているようですが、響灘埋立地で稼働する風車下で発見された野鳥死骸の数としては、トビに次ぐ多さです。

 海中の魚を見つけたら、風車が回っていることの意識もなく、急降下するときに風車の羽根に弾き飛ばされるようです。北九州市内で公式発表された野鳥の衝突死は、すでに撤去された洋上風車(1基)の羽根に接触し、背骨が折れたミサゴ1羽が唯一です。死骸が発見されても事業者が衝突死と認めない傾向があることが、野鳥被害の実態が表に出ない大きな原因と言えます。

◆ オオミズナギドリ(ミズナギドリ科)渡り鳥条約掲載種 英名:Streaked Shearwater              写真提供:(公財)日本野鳥の会                

                    

 一般の方たちには、たぶんなじみのない名前の海鳥ですが、春に遠くオーストラリア周辺や南シナ海などから日本に渡って来て、近海の離島で数少ない集団繁殖をしています。国内数ヵ所では集団繁殖地が天然記念物に指定されています。
 オオミズナギドリは、朝まだ暗いうちに島を飛び立ち、広範囲の海域でエサの魚やイカの群れを見つけて捕らえ、夕方暗くなって島に戻り、ヒナにエサを与えます(オオミズナギドリは漁師さんたちの魚群探知の役割を果たしています)。夏が過ぎ秋が近くなる頃、親はある程度成長したヒナを島に置き去りにして、南に飛び去ります。ヒナはさらに3週間ほど体内に蓄えた脂肪を利用して成長し、10月~12月に島を離れます。
(引用:三省堂コンサイス鳥名事典より)

 北九州市若松沖の響灘では、洋上風車建設区域を含むエリアで、2014年から2015年環境省の委託により、調査会社がオオミズナギドリの生息調査を実施していますが、春から秋にかけて、各季2~3日2~3時間程度の調査で、約300800羽のオオミズナギドリが確認されています。実際はこの10倍程の数が生息していると推定できます(野鳥の会北九州支部の白島での営巣調査を参考)

~オオミズナギドリへの影響を過小化する事業者~

 オオミズナギドリは、ほとんどを海上と離島で過ごすため、これから増えていく洋上風車の影響を大きく受ける可能性があります。しかし、事業者は島から飛び立ったり、戻るとき以外は海面すれすれを飛ぶから、風車の羽根には衝突しないと言い切ります。確かにエサの魚を探したり、捕獲するときはそうですが、天候によっては風車の回転範囲を飛ぶ可能性があります。響灘埋立地で稼働している陸上風車においても3ヵ所でオオミズナギドリの死骸が発見されています。いずれも11月に発見されています。野鳥への影響を極力小さいと言わなければならない事業者の都合のいい解釈は信用できません。

                                 つづく>


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