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響灘洋上風力発電の影響を受ける野鳥たち②

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「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」Association to protect wild birds from wind power 危険が迫る野鳥たち   ◆   カモメ類   Gulls   写真:ウミネコ  Ⓒ H.MAKINO     カモメ類は、 1 年中見かけるウミネコと、越冬のために飛来するユリカモメやセグロカモメなどが沿岸や河口などで見ることができます。今後、洋上風力発電が増えれば、風車の羽根の回転範囲の高さを飛ぶトビなどと同じように、カモメ類の衝突死が増えることは間違いないでしょう。しかし、海上に落下すれば波に流され、死骸は不明となります。よって、衝突死は把握できずに、カモメ類への影響は小さいとされてしまうでしょう。  国内で公表された風車への衝突数で圧倒的に多いのはタカ類ですが( 2023 年3月時点で 210 羽)、それに次いでカモメ類が多く、 2023 年3月時点で 68 羽です。タカ類が 2019 年から 31 羽増えていますが、カモメ類は変わりません。海や湖、河口などに落下した場合、発見される可能性が低いことが理由でしょう。  カモメ類は世界で最も個体数が多い野鳥ではないかと言われているだけに、風車への衝突死は軽視されがちですが、数が多いからといって、あるいは重要種ではないからといって、軽視することは慎まなければなりません。自然界の生態系は微妙なバランスで保たれており、それを壊すのは私たち人間による開発行為であることを認識しておく必要があります。 ◆   カモ類   Ducks  写真:ツクシガモ ⒸY.MORIMOTO   カモ類の多くは冬期に越冬のため渡来し、内陸の湖沼や農業用ため池、ダム湖、河川、河口から海域まで、広く見ることができます。群れで行動するため、移動の際に高く飛びあがり風車に次々と衝突する恐れがあります。国内で公表されたカモ類の衝突としては、マガモ、カルガモ、コガモ、スズガモなどですが、響灘沿岸に 10 基並んだ風車(撤去済み)に衝突した可能性が高い、体の上部と下部が断裂したカルガモの死骸が発見されています。海外では、風車の後部において発生する乱気流に巻き込まれて、海上に落鳥したカモ類の事例もあります。  響灘の周辺には港湾水路や貯水池、ため池などが多く、希少種も多...

響灘洋上風力発電の影響を受ける野鳥たち①

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「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power    北九州市若松沖で建設工事中の響灘洋上風力発電25基の事業は、響灘海域の生物多様性を軽視するかのように、海域に生息する野鳥たちへの実効性ある影響軽減策を実行する気配もなく、工事が進んでいます。この事業を誘致した  “ 環境未来都市  ” “ SDGs未来都市 ” の北九州市は市民に配布される「市政だより」でその進捗ぶりをアピールしています。 ※野鳥たちに危険が迫っていることもアピールしなければです。 身に危険が迫っていることも知らずに... Birds don't know they are in danger.   2025 年末には海水面から 200 mを超える高さの巨大な風車がニョキニョキと海上に建ち、直径 170 m以上のローター(回る3枚羽根)が「ウオーンウオーン」と、うなり音を発しながら運転を開始します。ふわふわと飛び回るカモメたち、上空でくるりと輪を描くトビや、ホバリングしながら魚を探すミサゴたちにとって、身に危険が迫っていようとは、全く理解も想像もできない響灘海域の野鳥たちです。今日も響灘海域の野鳥たちは、騒々しくなった海上にとまどいながらも、エサ探しにいそがしく飛び回っていることでしょう。  私たちは、野鳥たちが風車の羽根に弾き飛ばされないように、叩き落とされないように、「危ないよ!」と知らせることもできず、事業者の対策にも期待できず、誘致した北九州市はそれを見て見ぬふり、 “ 脱炭素 ” の旗を振って、海上に林立する洋上風車を誇らしく宣伝することでしょう。 野鳥たちの命の危険を顧みることをせずに稼働する風力発電は恥ずべきことです。   2023 年 3 月時点における、国内で風車に衝突死した野鳥の数は 604 羽と公表されていますが、行政関係からの報告が主であることと、この多くが偶発的に発見されたことをことを考慮すれば、実際にはこの 10 倍くらいと推測できます。特に事業者は月に一度の設備点検ついでの死骸探索など、積極的には死骸発見に努めていないと思われるからです。 (事業者にとって都合の悪い野鳥(希少種など)の死骸が発見されれば、隠蔽の可能性も?アセス...

人にもやさしい風力発電は当たり前

「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」 Association to protect wild birds from wind power 声上げる秋田の低周波被害者 風車に囲まれた住宅地、これ以上犠牲者増やすな! 抜粋引用:長周新聞 2024 年 9 月 25 日   秋田県では、陸上で280基以上の風力発電が稼働中、秋田港・能代港の港湾内で33基の洋上風力発電が商業運転を始めた。今後200基近くの洋上風車建設が取り沙汰されており、由利本荘・にかほ市沖は国の浮体式洋上風力の実証実験場になろうとしている。こうして住民たちが巨大風車に取り囲まれた生活を余儀なくされる中、風力発電の低周波音による健康被害を訴える人が増え、 2022 年、被害者の会である「風力だめーじサポートの会」が結成された。国は風力発電と健康被害の因果関係を認めず、事業者は利権のために風力発電建設を止めようとしないが、その下で住民たちはどのような状況に置かれ、なにを訴えているのか。 ◆ 風車と人々の生活があまりにも近い!   山を見れば、尾根沿いに風車が林立している。にかほ高原のような観光地も、舗装した道路が風車の真下を通って展望台につながっており、おかげでキャンプ場は使えなくなった。海には海岸沿いに風車が10基、20基と建っている。道路を走っていても、街中で突然、巨大風車が出現することも少なくない。コメ作りの中心地・子吉平野に水を供給するため池の周辺にも、あちこちに風車が建っていた。これだけ 風車に囲まれているのだから身体への影響が出ないはずがない。   ◆ 事業者や市役所からは無視され続けている! 『事業者に風車の稼働を止めてもらうしかない。みんなが安心して生活できる環境をとり戻したい』 『市役所に訴えても、なにもなかったように無視され続けている。しかし、泣き寝入りなどしたくない』   ◆ 低周波で動悸や胸部痛が続く ~由利本庄市に住むS・Mさん( 71 才) 『 2012 年に私の家から 1.9 ㎞のところに風力発電1基、そして 2017 年、南側の自宅から 2.4 ㎞のところに7基の風車が建った。加えて北東方向2㎞のところに2基が稼働し始めた。 2020 年の2月、夜中に目が覚め、突然グウングウンという音が聞こえてきて、急にドキドキした感じになり、血管...

洋上風力発電で町はどうなったか、秋田県

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「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」Association to protect wild birds from wind power    秋田県では陸上に風力発電280基以上が、また港湾内に洋上風力発電33基が稼働しており、加えて4海域が国の促進区域に指定されて、これから秋田県沿岸に150基以上の洋上風力発電が建とうとしている。さらに、反対していた漁協の運営委員長が亡くなったことで、5ヵ所目の対象海域として新たに浮上した。これだけ風車を建てて、果たして地元経済は活性化し、住民の生活は向上しているのか。「風力発電の固定資産税収入、新たな産業が生まれ、雇用創出」と宣伝されているが、秋田県で何が起こっているのか。 抜粋引用:長周新聞 2024 年 10 月 2 日 ◆ 少子高齢化、人口減の解決策に風力発電  以前、人口が 100 万人を切ったと聞いた秋田県、さらに 2024 年 7 月に 90 万人を切った。日本三大美林の「秋田杉」も、輸入木材の影響で衰退しているという。そこで、日本一と言われる少子高齢化の解決策という名目で 2000 年前後から急浮上してきたのが風力発電だ。その後、再エネの導入による産業振興と雇用創出を掲げた。 ◆ 高齢化した漁業者の弱みに・・・  秋田県でも近年、漁業者の高齢化と後継者不足によって、漁業者の減少が止まらない。船はあっても漁業をしていない人が多いという。漁業者たちは、洋上風力事業者についても語った。 「説明会に出席すればタクシー代、風力発電の視察旅行は事業者持ち。原発と同じで、高齢化していつやめてもいい漁業者につけ込んでくる」 ◆ 促進区域は補償金なし  促進区域という制度がいかに漁業者に不利なものかがわかってきた。洋上風力発電の促進区域を選定する再エネ海域利用法( 2019 年 4 月施行)の考え方は、「洋上風力は漁業に影響を及ぼさない海域であること」が前提だ。したがって促進区域に指定されると漁業補償金 ※ は発生しない。秋田県漁協は法定協議会に参加しているので、これを認めたことになる。 ※ 通常、一般海域に建築物を建てるとき、その海域で操業する漁業者の漁業権を制限、または消滅させることになるため、事業者は漁業者に漁業補償金を支払わなければならない。山口県の上関町と下関市安岡では、漁業者が海を守...

アセスデータ改ざん疑惑の風力発電計画

  「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」Association to protect wild birds from wind power 山形県米沢市栗子山の風力発電計画は断念!  JR東日本の子会社が山形県米沢市で計画していた風力発電建設について、会社側は国が求める対策を講じた場合、スケジュールの大幅な遅れとコストの増大が見込まれるため、計画を断念すると発表した。 (2024年9月27日)    JR 東日本の子会社「 JR 東日本エネルギー開発」は、米沢市の栗子山に風力発電機最大 10 基の設備を計画し、国に環境影響評価準備書を提出していた。これに対し経産大臣は2024年 9 月 19 日、イヌワシなど鳥類への影響について適切な評価や保全措置などを求める勧告を出したほか、米沢市は同年 8 月、住民の理解を得るための対応が十分ではないとして、計画の白紙撤回を求めていた。これを受けて会社側は同年 9 月 27 日にホームページで、 スケジュールの大幅な遅れとコストの増大が見込まれ、事業として成り立たないとして計画を断念する と発表した。計画断念について米沢市長は「私たちが求めてきた事業の全面白紙撤回を受け入れたもので、地域の声を受け止めた賢明な判断だ」と話していた。 【ブログ作成者から】  何度か述べてきましたが、私の知る限り、事業者は計画を撤回するとき、地域の反対を理由にすることはこれまでほぼありません。(地域の分断を招き、混乱させたと謝った例はありますが)あくまでも採算がとれなくなったことを理由にすることが多いようです。また、野鳥への影響を理由にすることもほとんどありません。そうでないと環境アセスがいい加減だったことを認めることになるからでしょう。事業者同士が口裏を合わせているかのようです。風力発電事業は公正な事業とは言えないと、ますます疑念が深まるばかりです。   米沢市に住む私の友人は、特に自然保護や野鳥保護に熱心だったわけではなかったようですが、北九州市の響灘洋上風力発電や栗子山の建設反対に署名するなど、自然環境をないがしろにする計画に疑問を感じてきたようです。「ならぬものはならぬ!」と、共に言い合ったことが印象的でした。私たちのような保護団体が自然環境保全の危機感から、計画に異議申し立てするのは当然としても、大切なのは「自然環境や歴史...

青森県が再生可能エネルギーゾーニング案公表

  「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」Association to protect wild birds from wind power  青森県は 2024 年 9 月 3 日に風力発電の開発と自然環境保護を両立させるための区域分け(ゾーニング)を公表した。県内で計画中の陸上風力発電( 700 基近く)の大半が、事業を計画できない地域に区分けされました。                    赤色の「保護地域」は、事業を原則として計画できないエリアで、世界自然遺産やラムサール条約湿地、鳥獣保護区(特別保護地区)、保護林、文化財などの地域。黄色の「保全地域」は保安林や国有林、緑地保全地域、特別保護地区を除く鳥獣保護区などとする考え。県内の面積の大半を「保護地域」と「保全地域」が占めることになり、自然エネルギーの開発には多くの地域で規制がかかることを示す。   2024 年の 5 月、青森県知事は、「青森県の自然と地域と再生可能エネルギーとの共生」の有識者会議で、以下のように述べていた。 「国策だからといって、再生可能エネルギーが攻めてきて、青森県の自然が搾取される。ここで歯止めをかけなければ、ありとあらゆる場所で風力発電が行われ、様々な価値が棄損されることになりかねない。ここで歯止めをかけなければ野放図に広がっていく恐れがあった。世界に警鐘を鳴らすいい機会だ。」 開発と自然環境保護が両立できなかったことは明白! 「SDGs持続可能な開発」を後ろ盾にした自然破壊は許せない! 【ブログ作成者から】                                     青森県は北海道や秋田県に並ぶ風力発電先進県です(いい意味での先進とは言えませんが)。すでに稼働中の風力発電の数も突出しています。自然豊かで素晴らしい温泉もあり、美味しい郷土料理や農産物もあるこれらの県で、景観をないがしろにした計画が押し寄せていることに心痛めていました。地元で自然環境や景観を大切にする方たちの気持ちを考えると、どうしてもっと早く規制をかけなかったのでしょうか。八甲田山などの景観を軽視した風力発電計画が、今回の規制のきっかけになったのかもしれません。事業計画が出るたびに、その都度右往左往するよりは、総合的な規制をかけておくほうが対応しやすいでしょうし、計画...