洋上風力発電で町はどうなったか、秋田県

「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」Association to protect wild birds from wind power

 

 秋田県では陸上に風力発電280基以上が、また港湾内に洋上風力発電33基が稼働しており、加えて4海域が国の促進区域に指定されて、これから秋田県沿岸に150基以上の洋上風力発電が建とうとしている。さらに、反対していた漁協の運営委員長が亡くなったことで、5ヵ所目の対象海域として新たに浮上した。これだけ風車を建てて、果たして地元経済は活性化し、住民の生活は向上しているのか。「風力発電の固定資産税収入、新たな産業が生まれ、雇用創出」と宣伝されているが、秋田県で何が起こっているのか。

抜粋引用:長周新聞2024102


◆ 少子高齢化、人口減の解決策に風力発電

 以前、人口が100万人を切ったと聞いた秋田県、さらに20247月に90万人を切った。日本三大美林の「秋田杉」も、輸入木材の影響で衰退しているという。そこで、日本一と言われる少子高齢化の解決策という名目で2000年前後から急浮上してきたのが風力発電だ。その後、再エネの導入による産業振興と雇用創出を掲げた。

◆ 高齢化した漁業者の弱みに・・・

 秋田県でも近年、漁業者の高齢化と後継者不足によって、漁業者の減少が止まらない。船はあっても漁業をしていない人が多いという。漁業者たちは、洋上風力事業者についても語った。「説明会に出席すればタクシー代、風力発電の視察旅行は事業者持ち。原発と同じで、高齢化していつやめてもいい漁業者につけ込んでくる」

◆ 促進区域は補償金なし

 促進区域という制度がいかに漁業者に不利なものかがわかってきた。洋上風力発電の促進区域を選定する再エネ海域利用法(20194月施行)の考え方は、「洋上風力は漁業に影響を及ぼさない海域であること」が前提だ。したがって促進区域に指定されると漁業補償金は発生しない。秋田県漁協は法定協議会に参加しているので、これを認めたことになる。

通常、一般海域に建築物を建てるとき、その海域で操業する漁業者の漁業権を制限、または消滅させることになるため、事業者は漁業者に漁業補償金を支払わなければならない。山口県の上関町と下関市安岡では、漁業者が海を守るために補償金の受け取りを拒否したために、風力発電工事の着工ができなかった。

◆ 秋田名物ハタハタ漁に影響が出ないわけがない!

 秋田県沖に建設される洋上風力発電は、沿岸から14kmの至近距離に、直径8mの鋼管を砂地に打ち込み、その根元には1500トンの石材を詰めたカゴを敷き詰める。150基以上の風車の海底(水深1030m)に敷き詰められて、それが漁業に影響しないわけがない。漁業者は、「ハタハタは砂地を寝床にする魚だ。沿岸の藻場で産卵し、そこで稚魚が育つ。水深10mというのは一番大事なところだ」「国は第一次産業を粗末にし、少子高齢化が進み、漁師の跡継ぎもいなくなり、その弱ったところに、今度は風車を持ってこようとしている」と話す。「漁業との共生」どころか、真逆である。

◆国民から徴集する再エネ賦課金は外資と大企業に

 促進区域での風力発電事業では、事業者は漁業補償金を支払わないが、20年間の売電収入額の0.5%を漁業や地域と共生するために拠出し、それを自治体と漁協で分けることが決まっている。0.5%といっても億単位かもしれないが、利益のほとんどが外資や大企業に入ることになる。原資は、国民が電気料金に含めて徴集されている再エネ賦課金だ。

 ◆ 地元企業は活性化しているのか

 丸紅などが事業者となっている能代港と秋田港の洋上風力発電(4200kw33基)は、建設総事業費約1100億円で、うち地元企業の関連受注率は1割程度と発表された。洋上風力発電は1基あたり2万~3万点の部品が必要とされるが、日本の大手メーカーは風力発電の製造から撤退しており、欧米企業の独壇場だ。中枢部のナセルやブレードなどはデンマークのベスタス製で、設置工事の巨大船を含め、事業費の8割は海外調達。組立も来日した外国人作業員が請け負ったという。さらに、今後20年間の風車のメンテナンスはべスタス・ジャパンや丸紅洋上風力開発が担う。地元企業が参入する余地はほとんどない。

 ◆ 国策に翻弄されてきた歴史

 秋田県は1960年代に原発誘致、1990年代に放射性廃棄物処分場をつくろうとしたり、国策に翻弄されてきた。そして今度は東京の大企業の儲けのために、洋上風力発電である。しかも、陸上の風力発電ですでに健康被害を訴える人が増えており、それに加えて洋上に150基以上も建てれば、秋田県沿岸で生活する約20万人の住民の中で累積的影響として健康被害が拡がりかねない。「秋田では、冬の北西の強風が常に海から沿岸住民に吹き付けて、半年は荒れる。洋上風力発電が建てば、この先数十年間は低周波音に囲まれた人体実験場になってしまう。四大公害病に続いて、秋田風車公害と言われるような事態になるかもしれない」と、県民の一人は話す。カーボンゼロ(脱炭素)を掲げる政府は、2040年までに洋上風力発電を3000万~4500万kw導入する目標だが、その中で地方がどのような扱いを受けているかを以上のことが示している。それは北海道や東北をはじめ、全国の地方都市にとっても他人事ではない。

【ブログ作成者から】

 秋田県が人口減少・少子高齢化の対策として、風力発電に着目した頃は、風力発電が及ぼす影響など考えもつかなかったかもしれません。いや、知ろうとしなかったのでしょう。私自身もそうでした。しかし、大きな過ちは、国内で自然環境や人への影響が叫ばれ始めても、国も事業者も自治体も、それに真摯に向き合わず、国が促進することだから、環境省も何も言わないからと、「イケイケどんどん」と今日まで来てしまったことです。当時から形骸化してしまっていた環境アセスも役にたちませんでした。

 202310月、福岡県の響灘沖は促進区域の準備段階区域に選定されています。すでに水面下で協議が行われているでしょうか。その海域に生息する野鳥たちにも知らせてあげなければです!

 公正で自然環境に影響を与えない適正な再エネになるよう、保護団体と市民団体が連携してアクションを起こさなければなりません。国会で議論が行われるように、それに積極的な国会議員を選びましょう。そんな人はいますかね?「再エネ賦課金」廃止運動も活発化させなければなりません。

        野鳥にもやさしい風力発電であってほしい

        We want wind power to be wild birds friendly




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